7.2/2023

映画『天国の日々』(テレンス・マリック監督, 1978年)を視た。 on U-NEXT.

 

貧しい労働者のカップルが、なぜか「兄妹」と偽って年季奉公している。

若くして余命宣告された裕福な牧場経営者は、"妹"を見初めてプロポーズする。

"兄"は、どうせ一年もすれば死ぬだろうからと、"妹"を牧場主と結婚させる。

"妹"は、稼ぎのために"兄"が自分を嫁がせようとしたことにショックを受けながらも、次第に牧場主と打ち解ける。(けれども体は許さなかった模様)

だが牧場主はなかなか死にそうにない。

やがて牧場主は、"兄妹"がどうやら恋人同士らしいと勘付く。

周囲の人間も初めから2人が怪しいと疑っており、財産目当てで寄生しているのだろうと勘ぐる。

これ以上は耐えられないと、"兄"は牧場を去るが、季節が巡り再び牧場に戻ってくる。

牧場主は"兄"を殺そうとするが、逆に返り討ちにあって"兄"に刺殺される。

"兄妹"は逃亡するが、やがて追手につかまり、"兄"は銃殺される。

 

"妹"は牧場主に心を許し、愛するようになった矢先。

"兄"は妹へ別れを告げに来た矢先の悲劇であった。

"兄"は"妹"と別れ、"妹"は牧場主と幸せに暮らせるようになると思われた矢先。

 

恋人が、あえて"兄妹"と偽って暮らしているのは、初めから結婚詐欺を狙っていた、あるいは結婚詐欺の格好を取るストーリーのためとしか思えない。(作為性)

細かい指摘をしてしまえば、"兄"と"妹"との決別は電信や手紙などでおこなうことができなかったのか、とも思えるし、"兄"が去ったのであれば、"妹"は真実について牧場主に打ち明けることができていればすれ違いも避けることができたのではないか、と想う。

※時代設定はウィルソン大統領時代、第1次世界大戦前夜の出来事である。

しかしそう簡単に(都合よく)いかないのも現実なのであろう、たとえ"兄"が譲歩したとは言え。

牧場主が余命1年を宣告されながら存えたのも事態を複雑にしたのだろうが、当時の医療技術・医学知識において余命の予測値はなおさら大まかなものであろうし、それをあてにして結婚詐欺をはかった"兄妹"も愚かしいというものだ。

 

例えば野暮な正直さで以て...真実で以て3人が平和に暮らせただろうかと検討するが、所有欲...「女は自分1人のもの」、そんな根源的な本能のようなものがあるかぎり困難だろう。

 

 

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テレンス・マリック監督作品について

個人的には『ツリー・オブ・ライフ』(2011)の鮮烈さを今でも覚えている。

ニュー・ワールド』(2005)も良い。

シン・レッド・ライン』(1999)は評価の高い作品だろうか。

 

当時(2011-13年頃)、TSUTAYAで借りることができた(自分のできる範囲で)過去作がこれら3つだけだったので、『天国の日々』をU-NEXTで鑑賞できたことにありがたみを覚えている。

 

トゥ・ザ・ワンダー』(2012)『聖杯たちの騎士』(2015)を劇場鑑賞したが、あまりにナラティブが喪失しているので視続けるのが苦痛だった。

 

それ以降の作品は鑑賞していないが、『名もなき生涯』(2019)の前半部をDisney+で鑑賞した。映画の事前ストーリーと、実際の視聴体験との乖離について考えさせられる。