7.12/2023
美しく均整のとれたシネマトグラフィ
ホアキン・フェニックス主演、リドリー・スコット監督『ナポレオン』(AppleTV映画)
11月に劇場公開
予告編だけでも、過去のスコット作品『グラディエーター』(2000)を凌駕する名作の予感。
スコット監督といえば、他にも『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)など、歴史大作・戦争大作の製作には定評がある。(絵コンテにおいて発揮される高い画力も評判が良いだけあって、画面構築に優れる。)
ナポレオンといえば栄光と転落。
かつてスタンリー・キューブリックが、ナポレオンの人生を映画化に着手したものの頓挫。
その際に蓄積した知識を転用して、『バリー・リンドン』(1975)を製作したと言う。
セリフへの依存度を極限まで低め、映像で説明することへのこだわりが、かえって映画への深い理解のための思考の必要性を高める。すなわち、言語性を高める。
ノーランの理想がサイレント映画だという言説も見かけたが、彼のセオリーはもっと本質的なところにある。技術的制約からセリフを収録できないサイレントと、いくらでも言葉で説明できるのにそれをしないノーランとでは違う。例え、結果的に「言語への依存度が低い」点においては同一だったとしても。
ノーランがキューブリックから影響を受けた旨についてはしばしば見かけるけれども、確かに、言語依存性の低さにおいて両者は同一の哲学(信条)を抱いているようにみえる。徹底的な画面構築、そのために撮影現場において発揮される物質・物体へのこだわりだ。
まず、そこに映っているものがたしかに本物である/リアルであると確認する…それが作り物であることを疑いもさせないことが、視覚的なもの・物質的なもの…画面に映っているものを補完する、人間の、抽象的な、思惟が生ずる空間を確保する。