6.6/2023

"Oppenheimer"(2023)のTV spotが公開されたようだが、ナチズムへの対抗意識と、米国の団結と称揚を軸に感じた。

 

"DUNKIRIK"(2017)はちょうどBrexitの時期に公開されたが、今作の公開時期には、ロシアによるウクライナ侵攻が国際社会の中心的なテーマとなっていて久しい。

 

ナチは、利権やしがらみに囚われずに手放しで「敵」として描けるから、アメリカ系の映画においては物語を駆動するのに便利だ。

米国民ないしWWⅡにおける連合国諸国民は、おそらく、ナチに対する敵対意識においては容易に一致できるのだろう。

 

ナチは「憎むべき対象」として登場すれば良いのであって、映画の中でナチが登場したとしても、その思想や内容に対し具体的な批判・検討が加えられることは一般的にはない。

誰も疑問を差し挟むことなくナチを「敵だ」と認識する。説明不要の敵だから便利なのだ。

 

米国と現在対立しているロシアがナチズムに相当するわけではないだろう。むしろマッカーシーによる赤狩りの時代を描く方が、より明確にロシアを連想させるだろうが、現在米国民にとっての共通の敵といえばロシアに相当する。

 

一致団結してロシアに対抗する最終手段となるのは核兵器だ。核兵器は、戦後国際社会の秩序、すなわち抑止力として使用されてきた装置だ。

その核兵器開発の責任者としての科学者を描くわけだから、核兵器の功罪ー「功」という言葉を使用して構わないのかわからないがーについて慎重になるはずだ。ノーランの作風を骨組みとしながら。